REPORT 現場リポート
THE MUSIC DAY 東京ドイツ村中継奮闘記
■ 7月6日、音楽の日
日本テレビをあげての大型音楽番組「THE MUSIC DAY」の放送が行われたあの日、本会場の幕張メッセとは別の場所で、野外ステージ4曲の中継を任されたのが我々だった。
本会場の幕張メッセから南に約25km。そこに今回の野外ステージの舞台となった東京ドイツ村がある。
東京ドイツ村は、千葉県袖ケ浦市にある一大屋外テーマパークである。
今回は広大な敷地を持つこの東京ドイツ村の4箇所から中継を行ったのだが、広大な場所での作業に加え、ほぼ雨天と言う悪天候も重なり、非常に過酷な中継となってしまった。
終わってしまえばいい思い出に昇華されるものの、その日はまるで戦場のように慌ただしく大変な一日だった。
■ 中継当日
午前3時、東京ドイツ村中継のスタッフが結集する。長い一日の始まりだ。
番町スタジオ9階の事務所で全体打ち合わせを行い、その後機材の積み込みを行う。機材は前日に「映像チーム」「音声チーム」ともに準備をしてくれていたので、それをトラックに積み込み、午前4時に東京ドイツ村に向けて出発した。
東京湾アクアラインを抜けて千葉県に入る頃、雨足が徐々に強まって行く。
午前5時、現場に到着するも雨は止まず。
意を決してスタッフは雨合羽に袖を通し、雨の中セッティングが始まる。
1曲目の舞台はこども動物園という、敷地の南端にある場所。そして2曲目は敷地の東端にあるユリ畑で、東京ドイツ村のランドマークでもある観覧車のすぐそばである。3曲目は入口ゲート近くのフラワーガーデン、さらに4曲目は施設中央にある芝生広場が舞台となった。
1曲目、3曲目、4曲目の場所は比較的まとまった場所と言えるのだが、それらと2曲目の間は車で約5分も離れている。もはや1台の中継車で賄う事は不可能と判断し、なんと贅沢にも今回は中継車を2台使用。1曲目、3曲目、4曲目をNiTRoのOB-X中継車、2曲目を日本テレビの移動中継車107号車を使用する事でなんとか制作の要望を叶えられた感じだ。
2曲目 ユリ畑の様子
しかしこのように中継車を2台使用する事で、セッティングも2箇所に分かれて行わなければならなくなった。離れた場所に駐車した2台の中継車の間は徒歩での移動が大変なので、ドライバーさんに都度お願いしてスタッフの往復に車を出して貰った。
東京ドイツ村では園内を周回道路が走っていて、車は一方通行で時計回りにまわる。
終わった後にドライバーさんは「一日でこの東京ドイツ村を30周はまわったよ」と言っていた。
OB-X 中継車
そして今回の中継で一番大変だったのは大量のケーブルを敷線することだった。カメラケーブル、音声ケーブル、電源ケーブル、中継に必要な様々なケーブルを各曲ごとに中継車からステージまで敷線。カメラケーブルに至っては、総延長5kmにも及ぶ大量のケーブルが必要だった。ここで前日の準備の時の様子を写真に収めていたのでご覧頂こう。これだけのケーブルを今回の中継では使用していたのだ。なかなか圧巻のケーブル量だと思う。
カメラケーブルと音声ケーブル
■ 午後1時半 放送開始
雨の中、苦労してセッティングを行い、午後1時半、THE MUSIC DAYの放送開始を迎える。そして驚く事に番組最初の1曲目が我々の東京ドイツ村からだった。
1曲目はこども動物園から、はなわさんが「埼玉の歌」を熱唱する。実はこの場所での中継直前まで雨が結構激しく降っていて、「こども動物園では歌えないかもしれない」と言う話もあり、もしもの為にと100mほど離れたあじさい園を代替地候補としていた。
その場合には代替地と本番の場所で機材を一切合切動かさなければ中継できず、スタッフはあっちにこっちに移動、移動で慌ただしく対応していたのだ。
そんな苦労もあったりしたものの、その慌ただしさを感じさせない中継が出来たのは、ひとえにチームワーク抜群の我らがスタッフ陣のチカラだと思う。
さて、そんな1曲目が終わり、次の2曲目に移るのだが、なんと曲の間が約10分しかなかったのだ。
先に書いた通り、1曲目と2曲目の場所は移動に車で約5分かかる。
そんな状況なので、1曲目が終わると同時にスタッフが一斉にマイクロバスに乗って移動をすると言う、今までに類を見ないドタバタ劇があった。
これも当日の10時頃に全スタッフで移動を行うリハーサルを行い、念入りに動きを確認していたおかげで見事間に合う事が出来た。
まさにあうんの呼吸だった。見事としか言い様がない。
2曲目も無事終わりホッとひと息、と言いたいところだが、3曲目と4曲目のリハーサルがあるので、ここでもまたスタッフは大慌てで移動する。
そしてリハーサルを進めて行くにつれ、一度は止んでいた雨が再び降りはじめ、予想以上に大降りの雨になって来てしまった。
■ 後半戦に突入
東京ドイツ村は自然豊かで花々が大変美しい施設である。
それ故、地面が土に覆われている箇所が多く、雨が降ってぬかるんでいた事もあり、ケーブルを移動したりする際にはびっくりするほど泥まみれになった。
その時の様子も写真に収められていたのでご覧下さい。泥まみれになりながらも楽しそうに仕事をする和気あいあいの雰囲気が伝わるでしょうか。
4曲目は東京ドイツ村で行われたランタンイベントに合わせ、Little Glee Monsterが名曲「Jupiter」を熱唱。夜空に浮かぶランタンを綺麗に見せる為、実は前日の本番と同じ時間帯に東京ドイツ村を訪れ、事前にカメラのアイリス(明るさ)を見て、そのアイリス値に合わせてステージ上のLittle Glee Monsterを照らす照明の明るさも調整して貰っていた。
前日のランタンと本番当日のランタン
カメラで映すと意外と明るく綺麗に見えるのだが、実際はろうそくの灯りのようなほんのり明るい程度の薄明かりのステージだった。また、本番中は中継車に照明さんもスタンバイして貰い、VEと共に仕上がりの映像を見ながら照明の明るさなどを緻密に調整して貰っていた。
この様に、どうやって一番綺麗に放送出来るかを求めて小さな努力を重ねていたりもする。
そんなこんなで4曲の中継を無事に乗り越え中継が出来たのも、ひとえにチームワーク抜群の我らがスタッフ陣のチカラだと思う。
さあ撤収!と言った段階で、雨が一段と強く降って来てしまう。
月明かりもなく、真っ暗闇の中、手元灯りだけを頼りに黙々と撤収作業を行ったのだが、雨がひどく、機材は持参した小さなテントに集めるしかなく、なかなか思うように作業が進まずに大変だった。
最後に数箇所で中継を行った場所を確認し、忘れ物が残っていないか、ゴミが落ちていたら拾いながらチェックしてドイツ村を離れた。
照明さんとVEさん
■ 会社に戻って・・・
そこから会社に戻ってからも大仕事が待っていた。先に書いたように泥まみれになったのは実はスタッフだけではなく大量のケーブルもしかり。
それらの汚れたケーブルを綺麗に水洗いして、1本1本丁寧に拭きながら綺麗に巻いて片付けて行く。
ケーブルの量が尋常ではないので、やってもやってもキリがない。
しかしやらなければならない。
悪天候に見舞われなければここまで大変ではなかったかも知れない。しかしすべてが終わった時の達成感たるや、普段は味わえないほどのものを各々が感じられたのではないかと思う。
そう、終わってみれば、みんないい思い出としてこの時の事を楽しく話せる。
このような仕事は大変ではあるけれど、素晴らしい仲間と最高の番組が作れるのはとっても素敵な事だな、としみじみ感じる事が出来た。最後に中継車内で奮闘するスイッチャーKさんの勇姿を載せて締めくくりとしたい。
中継車内で奮闘するスイッチャーのKさん
筆者(TD)