REPORT 現場リポート

『ハプニングだらけのゴルフ中継!』

2023.01.19
ポスプロ技術・報道編集

 

■ 報道だけではない!CVセンターのおしごと

今回の現場リポートはCVセンターで働く落合がお届けします。ちなみに「CV」とは「コンパクトビデオ」の略で、以前は通常よりコンパクトなビデオテープを使って作業をしていたため、そこから付けられました。私が所属しているCVセンターの主な仕事は
報道の収録・編集・送出ですが、編集では報道(ニュース)だけでなく、スポーツの編集もたくさん行っています。野球やサッカー、ラグビーなど年間通して行われているスポーツや箱根駅伝・高校サッカーなど、日本テレビだからこその競技まで様々です。
スポーツ編集と言っても大きく2パターンあり、
① 主にニュース番組のスポーツコーナーで流すための編集
② スポーツ中継番組内で流れるハイライト編集
があります。
今回は②のゴルフ中継番組でハイライト編集を行った日々をお届けします。
そもそもハイライト編集とは何か?については、後半で説明します。

 

  ゴルフ中継業務の一週間。まずは力仕事から! 

通常のスポーツ中継番組のハイライト編集は日本テレビ本社で行うことが多いですが、
ゴルフ中継番組のハイライト編集では実際の中継現場である日本全国のゴルフ場に出向いて編集を行います。これは、中継映像と現場のENG取材カメラ映像の両方を撮って出しで編集するからです。ゴルフ中継では北は北海道から南は沖縄県まで、大会によって様々です。
今回は静岡県のゴルフ場に出張して編集をすることになりました。
(スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント 2022年10月7日~10月9日)

簡単に今回のスケジュールをご紹介します。
・火曜…東京で機材の積み込み
・水曜…現場のゴルフ場に移動&機材セッティング
・木曜…機材セッティング&事前編集
・金曜…本番! ハイライト編集
・土曜…本番! ハイライト編集
・日曜…本番! ハイライト編集 & 機材撤収 & 帰社
と、こんな1週間です。
さあ、話を戻します。CVチームも機材を持ち出し現場に運び出します。 

CV機材と積込みの様子

 

CV機材(写真左)だけでもこんなにありますが、制作技術(中継カメラ・音声)チームの機材はこんなものではありません。機材はなんとトラック3台分。これらの機材を約30名の技術スタッフと積み込みます。普段は力仕事をしていないため、CVチームは機材の積み込みに一苦労。私は趣味で筋トレをしていますが、積み込みの次の日は筋肉痛になりました。

 

■ 機材を運んでいざゴルフ場へ! 「小さな放送局」の完成 

翌日、現場に移動して、これらの機材をゴルフ場内に仮設した「放送センター」と呼ばれる部屋に組み立てます。

センターBefore ➡ センターAfter

 

運んできた機材をおろし、配置し、機材同士をケーブルで繋いでいきます。わずか2日間で“小さな放送局”を作ります。出来上がった放送センターでは各ホールから映像・音声を集約し、必要な部分を繋ぎあわせ、日本テレビ本社に送信します。さらに、日本テレビ内でテロップ等の細かい処理が施され、ご家庭のテレビに届けられるのです。
CVチームの機材は、本社と同じ収録・編集・送出といった一連の作業が行える可搬機材を現場に持ち込み、センター内に組み立てます。
編集で使用するノンリニア編集機材だけではなく、映像を収録する素材サーバーや確認用のモニター、完成した映像を送出するVTRデッキなど。いろいろな機材をケーブルで組んでいきます。

配線する筆者

 

■ まさかのハプニング発生!! 

CVチームも機材のセッティングを終え、電源を入れて問題がないかチェックを行います。
すると、なにやら赤く点滅している機材が… ん… 機材の電源を入れ直します。
「正常に起動してくれ!」と全員で機材を応援しました、
が… やはり点滅。機材にトラブルが発生したのです。
中継開始は2日後です。なぜこのタイミングなのかと正直思いましたが、すぐに切り替え、どこでエラーが起きているのか解明が始まります。

壊れている機材を確認する筆者と修理の手配中

 

エラーが起きていた機材は映像を収録するサーバーで、部品の一部が壊れていることが分かりました。このままでは何も収録ができず、編集どころではありません。急いで各所に連絡し対応を検討します。本社であれば修理対応もスムーズですが、ここは静岡県のゴルフ場。予備機材の手配や修理手順の確認をしていたら、あっという間に外は真っ暗に…。


機材修理のメドがたち、状況が落ち着いたのはさらに夜遅くになってからでした。
翌日、壊れた部品をメーカーがゴルフ場まで持ち込み、その場で修理対応を行いました。これで中継に向けた準備が完了し、ほっとひと安心。その日のご飯はとっても美味しかったです。

 

■ ゴルフ中継のハイライト編集とは? 

ゴルフは1ラウンド18ホール(前半1~9ホール 後半10〜18ホール)を4時間半程かけて回ります。その競技を中継するのですが、放送時間が限られているため、勝敗が決まる後半ホールの競技をメインに中継します。注目選手や上位陣の前半ホールは、中継カメラとは別にENG取材カメラを出して撮影します。その前半ホールの映像と中継している後半ホールの映像を30秒から3分程度に編集をする作業がハイライト編集です。状況によりますが、基本的には複数の注目選手の3分くらいのロングバージョンと1分くらいのショートバージョンの2パターンのハイライトを作っておきます。

ゴルフは何十人もの選手が同時に色々なホールでプレーしています。どの選手のどのプレーを編集するか瞬時に判断しなければ間に合いません。誰が何番ホールで良いプレーをしたかを把握しつつ、どのプレーが撮れているのか素材を見て、放送しやすい尺(時間)に編集をすることを限られた時間の中で行っています。
そのため、終わったころには、頭がパンパンで、どっと疲れが来ます。

 

■ 機材も直り、いよいよ本番!ところが次は・・・

大会初日、いよいよ1組目からスタートしました。ENG取材カメラも注目選手の撮影のためにホールを回ります。機材も無事直り、CVチームも気を引き締めて中継業務にあたります。しかし突然、「競技中断になりそう!」センターに情報が飛び込んできました。そして、「ホーンが用意されている!」『ファーン、ファーーン』ゴルフ場にホーンの音が。

実はこのゴルフ期間の天候はずっと雨で、多少の雨ならプレーは継続されますが、あまりにも雨がひどいとプレーが続けられず、天候が回復するまで一時中断になります。さきほどのホーンは中断を知らせるためにならされたものでした。競技は一時中止になりましたが、番組の放送(生中継)は予定通り迫ってきます。しかし、前半ホールの途中で競技が止まったため、中継予定の後半ホールに競技映像がくることはありません。そこで、途中まで前半ホールのプレーを撮影していたENG取材カメラの映像を使って番組を成立させることになりました。撮影した素材がセンターに届いたのはOAの20分前でした。そこから映像を取り込み、素早く且つ丁寧に編集します。中継枠の尺を埋めなければならないため、撮れている映像をできるだけ長く編集しなければいけませんが、その間にOA時間が近づいてしまい、「もういける?あとどのくらいかかる?」と番組制作側から確認が来ます。急いで完成させ、結果2人で手分けして20分~25分くらいのVTRを3本編集しました。これが最初に説明した本社ではなく、現場で編集する理由の良い例になったかもしれません。

   

 

■ 一難去って、また一難??次は・・・

今回、初日の競技が雨によりサスペンデッド(順延)となったため、その日に回れなかったホールが次の日に持ち越されました。早朝から前日の残りホールを行い、その後に2日目分のホールを回ることになりました。ほとんどの選手の後半ホールが残っていたため、2日目は早朝からの競技となりました。通常、午前中に行われる1番ホールの中継は別のチームが担当しているのですが、サスペンデッドでイレギュラー放送となり、後半ホールを担当している我々“放送センター”チームが中継を担当することに。そのため、CVチームも稼働、編集量がぐっと多くなりました。この日は、朝5時にホテルを出発し、日没まで作業が続きました・・・

 


そして大会最終日、ついに優勝者が決まります。今大会(スタンレーレディスホンダ)は4選手が競っており、最終ホールまで誰が優勝するか分からない展開となりました。ハイライトを編集しつつも誰が優勝するのか手に汗握りながら見ていました。そしてついに最終18番、小祝選手がパーパットを決め、1打差で優勝を決めました。すぐにその瞬間を編集して、直後にハイライトをOAしました。優勝の瞬間に立ち会えるというのが、ゴルフ中継に携わるうえでの1番の楽しさでもあります。
 

 

 

■ さいごに

ゴルフ中継の現場ではとても疲れ、正直つらいこともありますが、優勝の瞬間に立ち会える喜び。そして、その感動や喜びをいち早く、視聴者に届ける楽しさ・やりがいがあり。終わってみると、またすぐに携わりたくなります。各大会のドラマや感動をより良く視聴者に届けられるよう、これからも精進していきたいと思います。

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