REPORT 現場リポート

ニューヨークカメラマン日記 Season3 Volume5

2024.11.29
制作技術・報道技術

 

■ 4年に一度のアメリカ大統領選挙
合衆国連邦法で「11月の第1月曜日の翌日」と定められているアメリカ大統領選挙の投票日。
4年ぶりとなる大統領選挙の投票が今年11月5日に行われました。
事前の世論調査では接戦も予想され、アメリカ国民が民主党のハリス候補と共和党のトランプ候補のどちらを選ぶのか大きな注目が集まりました。
アメリカだけでなく、世界の行く末を大きく占う今回の選挙戦。
有権者はどういった姿勢で選挙に臨み、どのような判断をするのか。取材を通して感じた現場の熱量と、見えてきたアメリカの現状についてリポートします。

 


選挙集会には多くの人が集まります

 

■ 長期にわたる選挙戦 戦いは私の赴任前から
アメリカの大統領選挙は、日本の総裁選などと違い4年に一度とスケジュールが決まっているため、本選に向けて長期間にわたる選挙戦が展開されていきます。
大統領選挙の折り返しで行われる中間選挙。その後、予備選や党員集会を経て、党大会で正式に候補者が決まり、大統領選挙本選へという流れです。
私がアメリカに赴任したのは2023年7月だったので、その時にはすでに中間選挙は終わり、選挙戦が始まっている状況でした。そのため赴任直後から大統領選挙本選に向けての取材を様々な場所で行っていました。
ニューヨークではトランプ氏の裁判や集会を取材し、予備選の際にはバージニアの投票所での取材やワシントンDC支局の応援にも入りました。
また、選挙戦の争点を取材するため、カリフォルニアでは移民問題を、ノースカロライナではハリケーン被災地の取材も行いました。



大きな争点となった移民問題                      両陣営とも被災地を視察していました

 

そして、ウィスコンシン州での共和党大会の取材にも参加し、トランプ氏が正式に共和党の大統領候補者として指名を受ける瞬間も目の当たりにすることができました。


銃撃事件直後の共和党大会、トランプ氏の耳にはガーゼが

選挙戦の終盤は、両党が激戦州で多くの集会を開催しており、ペンシルベニアではトランプ氏が銃撃を受けた現場で再び行った演説を取材し、ミシガンではハリス陣営の集会でも取材を行いました。


■ 日本とは大きく違う、両陣営のメディア戦略
今回、両陣営の集会などの取材をした際に、メディアへの対応がかなり丁寧で親切だと感じました。
集会の取材許可が出た場合は資料が配付され、事前にカメラポジションから演台までの距離や照明の色まで詳細が通知されましたし、音声の出力からカメラポジションまでの距離なども事細かに記載されていたので、機材などの準備もしっかりとすることができました。
現場には、屋外であっても、しっかりとしたカメラ台が設営され、メディア専用のインターネット回線も準備されていることが多く、そのおかげで、生中継や映像の伝送もトラブルなく行うことができました。
また、トランプタワーでの自民党・麻生氏とトランプ氏の会談の取材をした際は、撮影場所が暗く、カメラマン同士で心配していると、陣営の担当者が状況を察して、すぐに照明を用意してくれたこともありました。
このようなことは、日本で選挙演説や集会を取材するなかではあまり経験したことがなく、アメリカの両政党が、いかにメディアへの映り方に気を配り、その影響力を意識しているのかを感じ取ることができました。
暗い早朝のセットの段階から照明をつけてくれています
 


暗い早朝のセットの段階から照明をつけてくれています


 

■ 両陣営ラストスパート、選挙前最後の集会
選挙戦の最終盤。両陣営は激戦州で多くの集会を展開していました。
私は投票日の2日前にはミシガンでのハリス陣営集会、投票日の前日には同じくミシガンでのトランプ陣営最後の集会を取材しました。
ハリス陣営の集会は、大学の小さな体育館で行われていました。大学ということで若い人が多く、会場にはノリの良い音楽が流れ、踊っている人が多くいたのが印象的でした。ハリス氏も演説の中でZ世代に対して、短くわかりやすいメッセージを伝えていて、今回の選挙でカギを握る「若者」の支持を得たいという意向が感じられました。
トランプ陣営最後の集会は、予定されていた開始時刻から大きく遅れ、日付の変わった投票日当日の午前0時過ぎから始まりました。アメリカ大統領選では、日本のように選挙活動は投票日前日の午後8時までといった明確な決まりはなく、このような時間でも演説を行って良いようです。深夜にもかかわらず、多くの支持者が会場に残っていて、いつものトランプ氏の集会と同じく、熱気に包まれていました。


若い支持者を集めたハリス集会
 
深夜にも多くの支持者の集まるトランプ集会

 

■ いよいよ選挙当日、アメリカ国民の選択は?
選挙当日、私はミシガンからワシントンDCへ移動し、ハリス陣営の勝利集会場で取材を行いました。
開場には多くのメディアが集まり、カメラ台は大混雑。世界中のメディアが集まっていたため、様々な時間に各局が中継を行っていました。
注目が集まる中いよいよ開票が始まります。事前には接戦も予想されていたため、数日間最終的な結果が出ないことも覚悟していましたが、結果はトランプ氏の圧勝。深夜にはトランプ氏の勝利演説も行われ、大統領選が終了しました。
 



混雑するカメラ台 日中から深夜まで常に中継が行われていました

 

■ 敗戦後、ハリス陣営は
私の取材していたハリス陣営では、支持者は落胆の表情を浮かべながら、会場を後にしました。
投票日から一夜明け、ハリス氏は支持者の前で敗戦の弁を述べ、その翌日には、現職のバイデン大統領もホワイトハウスで会見を行いました。
今回の選挙では、民主党がしっかりと敗戦を認めたため、4年前のような大きな混乱はなく、私たちも無事に大統領選の取材を終えることができました。



筆ホワイトハウスでのバイデン大統領会見も取材しました

■ 大統領選を通して見たアメリカ
今回の大統領選取材では、各地で様々な人の意見を聞き、現地での生活を見る機会がありました。
アメリカには、ニューヨークのように人口が密集している場所で生活している人もいれば、最寄りのスーパーまで車で数時間もかかる農場地帯で生活している人、ご近所さんのいない森林地帯で生活をしている人も多くいます。
その生活スタイルの違いに加え、人種や宗教の違い、日常で使う言語の違いなど、様々な文化や価値観の違いのある人々が、アメリカという一つの国で暮らしています。
それぞれ立場の違う人たちが、自分の生活やアメリカ全体がよりよくなるためには、どちらの候補が大統領にふさわしいのか考えた結果、今回の選挙結果につながったと感じました。
この取材を通して、ニューヨークで暮らしているだけでは知ることのできなかった、アメリカの大きさと多様性を改めて認識することができ、良い経験となりました。
トランプ次期政権では『アメリカ』そして『世界』がどのように動いていくのか、引き続き取材していきたいと思います。
 


ニューヨーク トランプタワー前で勝利を祝う支持者

 


 

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